Bibliographical Database of Keio Economistsの公開にあたって


趣旨説明


 ここに公開するのは、かつて慶応義塾で教鞭をとった経済学者について、その職歴、学歴、著書、論文などを調べ、これをデータベース化したものです。ここに公表されているものは後で述べるように、扱った時代や人物などについて制約があります。しかしながら、慶応義塾で教授した経済学者についてのデータベースとしては初めての試みであり、日本経済思想史研究や慶応義塾史研究に大きく寄与するものと考えられます。



データベース本体について


 この研究においてもっとも基本的な作業は、慶応義塾の経済学者たちの著作リストを作成することであります。堀江帰一、福田徳三、小泉信三、高橋誠一郎などの著名な経済学者については全集や著作集が存在し、著作リストも存在していますが、すべての経済学者についてこの種のリストが存在しているわけではありません。したがって、さまざまな索引や当該の学者についての参考文献に付された著作リストなどを頼りに、できるだけ完全な著作リストを作成するよう、努めました。これについては、図書の形態をとるもの、論文の形態をとるものに分類して、掲載しております。また、それぞれの経済学者についての履歴が重要であります。本サイトでは、生年月日、出生地、没年月日などの基礎的データとならんで、一定のスペースをさいて各経済学者についての解説を加えております。個人年表を付して、歴史の流れの中で各経済学者の活躍が位置づけられるような工夫をこらしております。履歴につきましても、よく知られた人物と埋もれた人物のあいだには、大きな情報の格差が存在します。後者に関しては、基本的な履歴についてもあいまいな点があるのが実情です。本研究では、この点も考慮して、できるだけ資料的な裏付けがある履歴を作成するよう、こころがけました。たとえば、お雇い外国人教師として活躍した、Paul MayetやWalter McLarenについては『慶応義塾百年史』等にも十分な記述がなく、今回はじめてその履歴や業績の概要が明らかになったものだと言えます。さらに、各経済学者について興味を持つ閲覧者の利便のために、当該経済学者について書かれた参考文献リストを掲載しています。これによって、研究や勉学のための情報を得ることが可能になります。



画像データベースについて


 上記のデータベース本体に加えて、本サイトには一般的には余り目にすることのない和とじ本の全文、および収録対象人物の主著作標題紙・目次が画像データの形で搭載されています。慶応義塾図書館は、小幡篤次郎訳『英氏経済論』、永田健助訳『宝氏経済学』のように、貴重な和とじ本を数多く所蔵しておりますが、本サイトからはその内の十二点の和とじ本を読むことが可能です。



本研究の意義


 本研究の本体は、データベースの作成です。作業自体は地味なものでありますが、長期的な意義は極めて大きなものと考えられます。ご存知のように、現存の研究者については本人の手によって研究業績リストなどのデータベースが蓄積されつつありますが、過去については、そもそもどのような研究者が義塾の教壇に立っていたのかさえ、明確には整理把握されていません。ましてや、彼らがいかなる経歴で、どのような研究業績を残したのかは、注目を集めた特定の研究者についてのみ、それぞれ別々の機会に調べられた資料があるだけです。
 このような現状をかんがみて、本研究は、明治二十三年の義塾大学部創設以来、昭和三十年代前半までに理財科・経済学部で経済学に関わる講義を行った研究者を、必要な限り網羅的に取り上げ、その履歴、著作、参考資料を調べうる限り詳しく掲載することを目指しました。結果として出来上がったものは、一学部が19世紀から第2次世界大戦後にまで至る時代の流れの中で、蓄積した研究者とその研究業績の総合的なデータベースとなっております。
慶応義塾は2008年の創立150年を経て2015年には大学部創設125年をむかえます。この慶応義塾にとって本研究が新たな義塾史編纂の基礎となることは言うまでもありませんが、本研究は単に慶応義塾の歴史にとってのみ意義を持つものではありません。完成されたデータベース総体は、収録対象となった研究者の数と質から考えて、明らかに近代日本知性史の一面を証する重要な資料となりうるものと自負しております。総じていえば、本研究を利用して、塾史研究、あるいは学部史研究、さらには各経済学者についての個別研究が進展することは言うまでもありませんが、同時に本研究は近代日本経済思想史経済学史研究を大きく深化するものと期待しております。
 また、本研究では、図書館員がデータベースのフレームワーク作成に当初から参加することによって、彼らが近代日本経済思想史の主題知識を深めるとともに、研究者も現場図書館員の最先端の情報処理知識に接しました。その点では、図書館員と研究者のジョイントワークの一つのモデルを構築することができたことも、忘れることのできない意義と言えます。



研究参加者


 研究は、

  慶応義塾経済学部 池田幸弘
  慶応義塾経済学部 小室正紀
  東北公益文科大学 三島憲之

により、図書館と経済学部教員有志による共同プロジェクトとして2000年6月にスタートしました。
2000年6月から2004年9月を第1フェーズとし、2004年7月には、その成果としてデータベースを学内公開しました。2004年10月からは第2フェーズとなり、図書館の協力のもとに経済学部、経済学会のプロジェクトとして継続され、2007年6月、一般にデータベースを公開しました。今般、いままでの作業が一定の成果をあげたものと判断し、とりあえずプロジェクト自体を2014年3月に閉じることにいたました。2000年の研究スタートより、つぎの方々に資料の収集、調査、入力作業、解説の執筆、そしてシステム構築、事務局運用にご協力いただきました。

●第1フェーズ(2000年6月~2004年9月)

 秋山美佐子、石井寿美世、坂本慎一、原谷直樹、堀和孝、山本崇弘
 (以上調査研究員:50音順)


●第2フェーズ(2004年~2014年3月)

 秋山美佐子、青栁淳子、桑田学、佐藤方宣、高橋周、高橋真悟、寺川隆一郎、原谷直樹、平山勉、堀和孝、宮田純、山本崇弘、横山寛
 (以上調査研究員:50音順)

 三宅薫子
 (事務局)

2007年4月より
本塾経済学部 柳沢遊、
2011年4月より
本塾経済学部 寺出道雄
が本研究に加わりました。

なお本研究の遂行に当たっては、三田メディアセンター予算および経済学部予算からの支出とともに、福澤諭吉記念学事振興基金、慶応義塾経済学部研究教育資金、慶応義塾経済学会基盤関連活動補助の交付をいただきました。

最後になりましたが、元慶応義塾図書館長の飯田裕康氏からはプロジェクト発足時にご協力を頂き、また元三田メディアセンター事務長の加藤好郎氏からは終始暖かいご協力を頂きました。記して謝意を表する次第です。