堀江帰一は1910年より再度の外遊に出発し、イギリス、ドイツ、アメリカを回って翌年帰国したが、この間、研究の関心は社会問題や社会政策にあった。留学中、彼はしばしば実際に救貧院の見学を行い、さらにミュンヘンではドイツ社会政策学会の重鎮であったブレンターノ(Brentano, Ludwig Joseph)を訪問したりしている。堀 江は帰国するとすぐに「最近社会問題」と題する講座を新設して自ら担当し、またこの頃より精力的に社会問題・社会政策に関する論説を発表していった。本書はこれら論説の中から全部で10編を選び、改訂を加えた上で一書にまとめた物であり、彼のこうした方面の最初の著作でもある。内容は主にイギリスにおける制度や実態 を紹介したものであったが、それは「英国の労働者が自作的団結を組織して、自助の方針に重きをおく一方に自治的能力なき労働者に対しては国家自ら保護を加え、自治と干渉と相奇頼して、以て万全の効果を収むるの一事は他の諸国に取って、参考に資す可きもの少なからざることを信ず」との彼の考えによるものであった。(三島憲之) |
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