第一次大戦は日本に空前の好景気をもたらして、「成金」が続出し財閥は巨大化したが、一方で物価高は庶民を苦しめ、貧富の格差は覆うべくもない状況となった。こうした社会状況を見て堀江は、「国家資本主義」(1921年に行った講演の演題)による経済体制の根本的な変革を主張するようになる。それは主要産業の国有・国営化とその民主的コントロールを柱にした、いわゆる混合経済体制の採用を求めるものであったが、本書はこのような思想が本格的に展開されている堀江帰一の代表作である。本書において堀江は、「今日の経済組織に大なる欠点があって、我々の経済生活に不公正なる事実を生じて居る」との現状認識より、これを匡正する手段として国有事業の拡張と営利事業の社会化、労働者の産業管理権の確立、所得税・相続税の強化による社会的格差の是正、国民養老年金法の制定、物価安定のための最高価格の公定などを提案し、また産業上のデモクラシーと政治上のそれとを不可分とする立場より、金権政治の一掃と普通選挙制の実施を主張している。(三島憲之) |
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