高橋誠一郎の研究において枢要な位置を占める重商主義経済思想の研究。1070ページにも及ぶもので、高橋の著作の中でも最も浩瀚な研究である。高橋の重商主義の定義は広狭、二通りの形でなされている。広義の意味での重商主義とは、中世的な秩序が瓦解してから個人主義の経済学が確立、普及するまでの初期資本主義の経済思想、そして狭義における重商主義とは国王の恣意に反対し、人格上のあるいは財産上の権利を求めんとする新興ブルジョワジーの経済思想を指している。この二通りの定義にしたがって本書は展開されていくが、その大きな特徴はやや限定された意味での重商主義経済学説のみならず、ホッブス (Hobbes, Thomas) やロック (Locke, John) のような社会思想史に登場する巨人も考察の対象となっていることである。これは、「経済学の成立」にとって後者も重要な意味を持つという著者の考えの表われであろう。本書における高橋の論述が『古版西洋経済書解題』同様、彼自身の蔵書に多くをよっていることは言うまでもない。近年、本書は創文社から復刻された。(池田幸弘) |
|
4/8
4/8
|