画像一覧 > 経済学史(上) (『経済学体系』第6巻) / 高橋誠一郎著



  高橋誠一郎の筆になる経済学通史。著者の言に従えば、「先ず古典的経済学の成立及び発達を述べ、やがて其の分岐を説き、次いで之に対する政策上及び方法上における反動を叙し、最後に理論経済学の勃興に及」ぼうとするものである。しかし、実際にはスミス (Smith, John)『国富論』から始まり、リカードウ (Ricardo, David) 後のイギリス古典派経済学の描写で終わっており、高橋が言う「理論経済学」の成立、すなわち限界主義経済理論には及んでいない。本書のタイトルが『経済学史(上)』となっているゆえんである。本書における著者の関心事の一つが価値理論の変容であり、リカードウの後の経済学についても、マルサス (Malthus, Thomas Robert)、トレンズ (Torrens, Robert Colonel)、シーニア (Senior, Nassau William)等がこうした観点から考察の対象となっている。利潤論についての論述に際しては、適宜、ベーム=バヴェルグ (Bohm-Bawerk, Eugen von) の『歴史と批判』が参照されているが、高橋の表記は終始ビョ-ム・バヴァ-クである。近年、本書も創文社から復刻された。(池田幸弘)


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