蔵書家としての高橋誠一郎については、これまでも多くが語られてきた。高橋旧蔵書は充実した本塾図書館のコレクションのなかでもひときわ光を放つものとなっている。本書の巻頭を飾るのが、1581年刊行の『種々なる人々の有する目下の不平の簡略なる検討』である。ロンドンでの本書の原典を見る機会に恵まれた著者は、その後本書を古書店に求めたがかなわなかった。ようやく、1938年のハーディング書店のカタログでこれを見つけ、翌1939年12月12日これを手に入れたとある。本書は、このように苦労して手に入れた西洋経済書を披瀝し、これを高橋の見地から解説しようとするものである。全37冊が解題の対象となっており、二、三の例外を除いては高橋自身の蔵書からタイトル・ページを撮影したものが挿入されている。慶応義塾大学図書館所蔵本は慶應出版社寄贈。近年、本書も創文社から復刻された。(池田幸弘) |
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