今日、経済史・経済思想史における業績が著名な滝本誠一であるが、アカデミズムでの評価が高まり塾の教壇に立つようになってからも、ジャーナリスト出身の彼らしく現実社会の問題への関心を持ち続けた。第一次大戦中の急速な経済構造の変化により、日本においても労働者の数は飛躍的に増加、労働運動が大きく高揚し、労働争議が頻発した。本書も、この時期のそうした労働問題の浮上を背景に執筆された。本書で滝本が提案している「利益分配法(Profit Sharing)」とは、欧米の企業で実行されていた、労使が事前に締結した契約に基づく条件によって事業の利益を分配することで、生産費の節減、労働の能率増進、ストライキの予防を図ろうとするものである。「此の利益分配法は資本家対労働者の利害を調和すべき資料の便宜手段たるべし」とする滝本は、将来的にはこの方法の法律による強制的実施を主張している。慶応義塾図書館所蔵本は著者本人による寄贈。(三島憲之) |
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