本書は『経済一家言』に続く滝本誠一の論集であり、晩年の著作の一つである。大部分は前著刊行以後に執筆された論文や講演の筆記であるが、『経済一家言』から再録された論文も数編ある。全体は三分野に分けられており、「前篇 史論」に6編、「中篇 経済史」に10編、「後篇 経済学説」に12編、合計28編が収録されている。その内容は日本経済史・思想史に関するものだけでなく、「経済史の学理的研究」、「歴史と歴史家」などの歴史哲学・方法論、「ケネーとアダム・スミス」、「ミルの社会思想について」といった西洋社会経済思想史、「マナァと荘園の比較」、「チュルゴーのギルド解散令と水野越前守の問屋組合禁止令」などの比較経済史、さらには「貧困論」、「私有財産制限論」といった社会問題に関する論文まで多方面に及んでおり、滝本の広範囲にわたる学問的関心のあり方が最後まで維持されたことを窺わせるものとなっている。(三島憲之) |
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