福田徳三の学位論文、「日本の社会的・経済的発展」。この時期にドイツで学位を取得した福田と気賀勘重がいずれも経済史的なトピックで論文を書いているのは、注意されてよい事実である。ここでは、古代から明治期に至るまでの日本の経済的、社会的な発展が扱われている。最終章は「現在の日本」となっているが、ここで展開されている福田の日本社会に対する批判は言及に値するものである。福田は、明治維新後の諸改革にもかかわらず、明治期における支配階級は依然として士族であるという。企業活動は本来町人、ないし平民によって担われるべき性質のものであるが、これを動かしているのは士族だというのである。また、伝統的な家族制度、家父長的な家族制度も健在であり、日本社会における家族の意義はほとんど変わっていないと福田は見る。福田が西欧近代をモデルにして日本の近代化の問題を考えていることは明らかであろう。(池田幸弘) |
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