同文館のシリーズ『世界経済叢書』全16冊のなかの二冊。他にこのシリーズには、堀江帰一による『ダンバー氏銀行論』が含まれている。フィリッポヴィッチ(Philippovich, Eugen von)の『経済学綱要』中の『一般国民経済学』を訳出した物が本書。フィリッポヴィッチと気賀勘重との関係は深く、気賀がしばしばフィリッポヴィッチに言及したためか、学生の間ではフィリッポヴィッチは気賀の異名にもなったくらいである。気賀によれば、ドイツ歴史学派の研究はしばしば『局部的事実の研究』にとどまっており、これに対し「徒に抽象的理論に偏せず歴史的研究にのみ馳せず能く中庸を守りて正鵠を得たる」本書のような存在は稀だとしている。ここに訳者である気賀の当時の経済学に対する判断が示されている。フィリッポヴィッチはオーストリア学派の中でも社会政策学会と密接な関係を保っていたのであり、そこに訳者は共感を覚えたのであろう。慶應義塾大学所蔵本は同文館から寄贈されたもの。(池田幸弘) |
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