『農業政策』と対をなす気賀勘重の『工業政策』。『農業政策』と同様、タイトル・ページには慶応義塾大学の教授陣執筆になる『経済学講義』とある。全18章のなかで、後半の11章以降は社会政策について紙幅が費やされており、労働組合、同盟罷工、工場監督官制度、賃金制度等々のトピックスが扱われている。気賀によれば、社会政策という概念は社会全体の利益を考慮する物であり、労働者階級の利害はその一部だというが、実際上、重要な区別は資本家と労働者という区別だという視点から、主として労働者保護について説かれている。気賀は人々の自助努力を重視しながらも、「権利は能力なり」という表現を使いながら、労働者は企業者と同等の権利を与えられたとしても、これを発揮するだけの能力を実際上は有していないという。ここに社会政策の必要性を著者は見ている。慶応義塾図書館所蔵本は時事新報社出版部から1924年に寄贈されたもの。(池田幸弘) |
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