画像一覧 > 民間簿記学 / 森下岩楠, 森島修太郎著


  森下岩楠は和歌山県出身で、最初期の慶応義塾において教鞭をとった人物である。その後は『時事新報』の記者などを経て、東京興信所の所長を務めた。本書は1884年、『時事新報』に勤務していた頃の著作である。森下はこの当時の『時事新報』において、中上川彦次郎に次ぐ地位にあった。同じ時期に記者だった人物では、他に須田辰次郎がいる。
  本書は、複式簿記のみならず、単式簿記の紹介もしている。下巻には単式簿記についての例題も設けている。下巻は一部問いと答えの形式で記されており、先に出版された『簿記学階梯』よりも初歩向けである。日本の会計史上、本書がどのように位置づけられるかは不明であるが、その内容からは単式簿記から複式簿記への移行期を示す教科書であったと推測できる。
  共著者の森島修太郎は、同じく和歌山県出身の士族であり、慶応義塾に学んでいる。三菱商業学校で教鞭をとり、三菱本店副支配人なども務めた。森下とは他に『簿記学階梯』を共著で出版している。 (坂本慎一)